棋になる話を棋の向くままに

「おい、将棋しろよ」
某大学将棋部のアイツが色々書きます。
主に将棋の資料、タイトル戦の棋譜、自戦記などをうpしていきますが、ときどき将棋と関係ないことも記事にします。

更新頻度:月4~5回

最終更新日 2/19

仕切り直しとなった七番勝負。
第3局の戦型は大方の本命の後手一手損角換わり。
後手が△4二飛と回る構想が比較的新しい形で、
糸谷竜王はこの形と右玉を得意にしているイメージがあります。
先手は愚直に棒銀を仕掛けて下の局面。
2015-11-08a
銀を引くのは棒銀を受けるひとつの形。
しかし、後手は▲2三歩を受けずに△4二飛!?
先手もすぐには▲2三歩を打たずに▲3六歩と攻めの幅を広げますが、
△6二玉とやはり後手は▲2三歩を受けません。
(°Д°)・・・
相掛かりや急戦矢倉では攻めの速度が大事になる展開があるため、▲2三歩を受けずに戦う指し方はあるものの、序盤から一方的に陣形を凹ませるのは独特の感性ですね。
結局31手目に▲2三歩と押さえて▲3五歩と銀を広く活用することに成功。
後手は陣形を整えますが、先手も片矢倉に納まって不満ないように見えます。
2015-11-08b
上の局面図が封じ手の局面ですが、恐らくほとんどの人が先手を持ってみたいのではないでしょうか?
攻めの活用もあり、コンパクトにまとまっている陣形で不満がないように見えるのですが、
ここから後手は△7五歩と突然玉頭から攻めかかってきます。
先手は△8五桂に▲7六銀!と強気な対応。後手は角を天王山に据えてから先手の香を取り香得を果たしますが、先手も銀立矢倉の好形に組み上げ、玉の囲いは強固なものとなりました。
2015-11-08g
上図の▲5五桂!が見えにくい攻め。
△同馬▲4一飛と下ろした局面が3方向に利いていて、打った瞬間は桂香損ですが一枚分は取り返せる上、玉型が大差なのでそのアドバンテージで寄せてしまおうという手です。
先手も細い攻めなので大変そうですが、そこは細い攻めを繋ぐことでは一流の渡辺棋王。検討でも先手が優勢と言える局面で、早い終局さえ囁かれました。
2015-11-08d
問題の局面。
この△5二銀が好手で一気に形勢が接近してしまいました。
直前で△2八飛に▲3八歩と中合いしてから受けておけば、ここで▲同竜~▲1六角の王手竜が成立するためハッキリ勝勢でしたが、本譜は竜が捕まる形となり怪しい展開へ進みます。
2015-11-08e
竜を取られる間に角の睨みで潰してしまうつもりですが、ここで△8四桂!という妙手があった模様。
▲同角と近づけておけば△7三金が角に当たるので一気に形勢が傾いた可能性が高かったです。
しかし、桂の中合いは互いに見えていなかったようで、これでまた先手が勝勢となりました。

終盤は93手目で▲5五桂がスマートな寄せと検討されていましたが、少ない勢力で決めにいくのは読みを十分に入れられなければ危険なので、本譜の方が自然に思えます。
終盤は先手後手ともに疑問手云々では語れないねじり合いでしたが、囲いの金を出動させて上部に圧力を加え、相手玉が露出したところでしっかり寄せきりました。

【第28期竜王戦第3局】


中盤でリードを奪った棋王が得意の「自玉は堅い」「攻めが繋がる」という現代将棋らしい展開に持ち込んだものの、右玉の特性を活かした勝負手に形勢が混沌とした一局でした。
糸谷竜王は他棋戦での棋譜を見ていてもこういう展開に持ち込むのが得意な印象です。
スパッと決められれば早いものの、一度ねじれ始めるとどんどん怪しくなっていく
まさに「異次元の将棋」とも呼べる独特な棋風ですね。

仕切り直しの第3局を制し、ここでリーチをかけて番勝負の流れをつかめるか!
戦型予想は角換わりですが、後手番の渡辺棋王の作戦に注目です。


~雑記~
大会出るのも久しぶりだなぁ。
やっぱたまに慣らさないといかんですたい。

月末のハロウィン色んな意味で盛り上がってたんですね。
ここ数年で一気に騒がしくなってしまって...
どうせ本来の祝い方も分からずにただ騒いでいるようにしか見えねえ(- -;)
私の小学生の頃は英会話教室でハロウィンイベントやったりしましたが、
クラスの子は知りもしなかったのに、時代ですかね?

1か月漬け込んだ梨酒がいい感じ。
来週末には少し口をつけてみますか(´∇`)♪



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ショートケーキは犠牲になったのだ・・・

竜王戦第2局は後手番の渡辺棋王の戦型に注目が集まりますが、
角換わりシリーズになると予想していた視聴者の期待を裏切り、
本譜も第1局に続き「横歩取り」!
2015-10-31a
渡辺棋王は後手番で矢倉や角換わりを主戦場にしているイメージがあるだけに少し予想外でしたが、横歩取りを指さないわけではないので本命のひとつではありますね。
流行の△7二銀型に構え、第1局では△1五歩と突き越してきましたが、本譜は△2三銀~△2四飛と飛車交換に臨む速攻策を採用します。
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駒割は銀香と飛の2枚替えで先手は馬を作って、後手は歩切れ。
駒割だけ見れば先手が十分に見えますが、後手は△1四歩を活かして△1三桂と跳ねた後に△6二玉~△7一玉と玉を固めます。一方の先手は後手の飛車に気を付けながら手を進めたいのですが、これが結構難しい。
プラスになる手が難しく、本譜の▲7七桂~▲7五歩は後手が美濃に囲うことを見越して玉頭からプレッシャーをかける手ですが、この構想がどうにもまずかったようです。
2015-10-31c
先手は▲6五桂~▲7四歩と玉頭を攻めますが、後手は△2五桂から△1五角と急所に駒を利かしていき飛車を打ちこむことに成功。一気に形勢が後手に傾きました。
2015-10-31d
あとは後手がどう先手玉を捕えるかの勝負になりましたが、上図の△7四歩が棋王らしい一着。
先手が攻め合いにいけないと自陣に手をいれたところで歩を補充しながら嫌味を消し、万が一にも負けない態勢を築きます。最後は先手玉を丁寧に縛り上げ、△4六角という華麗な捨て駒でぴったり寄せきりました。

写真①:封じ手を長考する糸谷竜王
28ryuoh1

写真②:投了10分前くらいの竜王
28ryuoh2

この余裕の表情である。
どっちが竜王か分かんねえなこれw

1日目から力戦模様の難しい展開でしたが、2日目の時点からは終始渡辺棋王がリードを保ち、危なげなく勝ちきったように思えます。
終局時間は14時52分!?なんと2日目のおやつが出る前に終わってしまうという事態に。
帰ってきたときには感想戦もとっくに終わって、完全に後の祭りでした。

【第28期竜王戦第2局】

最近は早い終局も珍しくはなくなりましたが、それにしても早いですねw
タイトル戦見るために有給取る人もいるぐらいなので、そういう人には同情します(^^;)
とにもかくにも、これで七番勝負は1勝1敗。これで仕切り直しですね。
再びどちらがリードを奪えるのか、第3局の戦型予想は糸谷の後手一手損でどうでしょうか。
ではでは。

~雑記~
最近リハビリ中です。(将棋)

対局中の自分の癖について考えてみたんですが、私はよく盤面から視線を逸らしますね。
私の脳はポンコツなんで、適度に思考を切らないとオーバーヒートしかねないんですw
あとは顎に手を沿えたり、ぼやいてみたり、頭をかいたり、飲み物飲んだり・・・
私って結構動きが多いですねw

学生大会見てても色んな癖の人いますよね。
扇子鳴らしたり、椅子を少し下げたり、指使ってリズム刻む人とか、まったく動かない人とか^^
プロの対局も、こういった癖に注目しながら見るとまた面白いもんですね♪
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王座戦最終局。
貴族の名にふさわしい赤紫のオシャンティの和服で気合十分の佐藤天彦。
先手を取った羽生王座の戦型にも注目が集まるが、堂々と横歩取り!
相手の土俵で戦う。それが王者。

最新型の戦いも予想されましたが、本譜は△5二玉に対し▲7七角
2015-10-29a
これはかなりマイナーな指し方です。
前例もぐっと減り、ほとんど未知の局面と言っても過言ではないでしょう。
最後の対局は「地力」で勝負する局面へと進んでいきます。
2015-10-29b
本譜の急所のひとつはこの局面。
先手中住まいvs後手中原囲いという少し古風な対抗形で▲3六歩と突いたところ。
ここから後手が△9六歩と端攻めを敢行。以下、9筋の香を吊り上げてから桂を跳ねますが、先手も▲2二歩を絶妙なタイミングで利かしてから▲3七桂と跳ねて仕掛ける体勢を築きます。
2015-10-29c
後手の攻めは分かっていても受けづらい。ならば受けない!と▲8六歩から強く催促して、飛車がずれたタイミングで後手の左辺に利かしをいれてますます難解な局面へ。局所的な戦いですが、こうなってみれば先手の囲いは手が付かない限りかなりの耐久力があります。
ここで△2六角とする手が有力と見られていたようですが、感想戦での検討は▲5五桂から踏み込んで難解。
ただ、本譜の△2六香は攻め味が薄く、先手の強襲を許したことを思うと疑問手だったかもしれないです。
2015-10-29d
先手は黙っているわけにはいかないので、飛車を切ってからひたすら玉のコビンに戦力を集中させていきます。
飛車を切っているために攻め足が止まってしまえばそこで試合終了。
しかし、羽生の終盤術は卓越しており、銀で狙いをつけた局面は駒を使い切って一見筋悪に見えるものの、急所を的確にとらえており冷静な攻めとの評判。受けが利かないと早逃げで対応してきますが、駒得を重ねてから細心の手順で寄せにいくのが手堅い勝ち方。
ここまで進んでみると先手の中住まいは綺麗に残り、横歩取りの快勝パターンになっています。
最後は後手から迫る手段がないため無念の投了。

積極的に動いた後手でしたが、急所を的確にとらえた羽生王座の終盤術が光る一局でした。



ここ数年は王座戦では中村太地、豊島くんの挑戦も記憶に新しく、
いずれもフルセットの激戦でしたが、ギリギリのところでいつも王座を防衛してますね。
恐らく若手棋士の間でも王座は「ラスボス」的な位置なんじゃないですか?w

ちなみに棋王戦挑決トーナメントでは羽生四冠が敗退!?
誰に負けたのかというとあの『四間飛車を激減させた男』阿部健治郎
独特な感性で将棋を指す期待の若手ですが、なかなか美しい棋譜で見事な勝ち方でした。

【第41期棋王戦挑決トーナメント▲羽生善治vs△阿部健治郎】


一瞬記録ミスかと疑いますが、終盤の△5六金!が盤上この一手の決め手。
ピッタリ詰めろ逃れの詰めろで羽生四冠を下しました。
カッケェ・・・///

~雑記~
最近のテーマ
2015-10-26a2015-10-26b
左は俗にいう「横歩取らず」の相掛かり。
端を受けてくれれば中原流で仕掛けるんですが、受けずに棒銀が案外やっかい。
端歩の活かし方が分からない・・・緩手なんだろうか?個人的には対応は2つ。
おとなしくいくなら▲1五歩~▲5八玉として守勢に回って端の位を主張。
激しくいくなら▲3六歩△7四銀▲3五歩△同歩▲3七銀くらいで、
(1)△8五銀には▲2二角成△同角▲7七桂△7四銀▲4六銀
(2)△3六歩には▲同銀△8五銀の攻め合いでどうなっているのか・・・
右図は対「脇システム」先手から角交換してきたら手順に歩を伸ばして仕掛けるという駒組み。
じっと端を伸ばされて▲1七桂~▲2五桂が結構嫌味。▲1七桂の瞬間に△4五歩とすれば角交換は必須になるものの、矢倉が薄いのが気になる。堂々と△4三金右とするもんだろうか?
△4三金右に▲6四角△同歩▲8三角はチラッと気になるんですが△5二角で捕獲できるかと。

誰か相掛かりと矢倉教えてくんねえかなぁw


最近の対局中のメンタル面でのテーマは「残心」
優勢になってからも気を抜かないのは当然ですが、相手玉を詰ますまで力を抜かないようにしたいですね。


10/31追記
王座戦第5局と同様の仕掛けとして取り上げられていたのが下の棋譜
【第45期新人王戦準々決勝▲阿部光瑠vs△斎藤慎太郎】

▲5六角と打つ同様の筋が成立しないのか、少し気になるところです。

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4回戦終了。

【第74期順位戦A級4回戦▲広瀬章人vs△森内俊之】

森内が阿部健治朗五段が得意とする右玉を採用。
中盤でリードを奪った広瀬がそのリードを絶妙に保ったまま押し切った一局。
A級で採用された戦型は流行することもありますが、これはなさそうw

【第74期順位戦A級4回戦▲久保利明vs△郷田真隆】

序中盤で積極的なさばきを見せた久保九段がリードを奪ったように見えましたが、
後手も手が切れないように先手に追随し、堅い玉型を活かして攻め勝った一局です。
振り飛車党としては腑に落ちない一局に思えます。

【第74期順位戦A級4回戦▲行方尚史vs△屋敷伸之】

屋敷得意の忍者銀。
相矢倉の型陣に攻め駒をさばき、急所に利かして踏み込みます。
途中は先手が指せそうな場面もあったのですが、終盤で▲2二歩としたのが緩手。
鋭い寄せで一気に終局となってしまいました。

【第74期順位戦A級4回戦▲佐藤天彦vs△渡辺明】

角換わり相腰かけ銀で後手が△7三桂と跳ねる積極策を採用。
渡辺の攻めvs天彦の受けの構図で後手は効率よく金銀をはがして寄せを目指しますが、
終盤の△2七角成とした手から流れが急変。先手が一気の攻めで後手に受ける手段を
与える間もなく寄せきってしまいました。
渡辺棋王の必勝パターンにも見えたのですが...勝負は最後まで分からない。
全勝対決を制したのは天彦で、これで単独トップに立ちました。

【第74期順位戦A級4回戦▲佐藤康光vs△深浦康市】

本家ダイレクト向かい飛車。
先手で急戦を仕掛けるかと思いきや、本譜はじっくりとした流れへ。
先手銀冠に対して地下鉄飛車で玉頭を正面から攻略にかかりますが、
渾身の▲1六歩!の勝負手に一気に混戦模様へ。
最後は分厚い玉型を活かして正確な終盤力で後手を討ち取ってしまいました。
まさに天衣無縫流。

4回戦終了時点での成績は
【4勝0敗】
佐藤天(9)
【3勝1敗】
渡辺(2)、屋敷(10)
【2勝2敗】
行方(1)、森内(7)、佐藤康(8)
【1勝3敗】
久保(3)、広瀬(4)、深浦(5)、郷田(6)

見事なヒエラルキー
天彦は王座戦での活躍に合わせて今期ノリノリですね。
上位陣が下位人を突き放せるかどうか、あと2戦くらいで今期の模様が決まりますね。
というか豊島君がB1で全敗してるじゃないですか!?
スランプなのか、羽生のせいなのか、それとも羽生のせいなのか...
せめて残留してほしいところです。

~雑記~
あるアニメの主題歌が酒井ミキオだった。
やばいですねぇ・・・ちょっとかっこよすぎですねぇ・・・
酒井ミキオが好きと言うと大体世代がバレてしまうんですがねw

最近詰将棋解くスピードが急激に落ちましたね。
運動能力も衰えてきてるし・・・やべえやべえ(汗
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第46期新人王戦。
若手棋士メインの棋戦で、40名に渡る厳しいトーナメントを勝ち上がったのは
菅井竜也六段(組み合わせ決定時は五段)と奨励会員の大橋貴洸三段!
両者は年齢では同じですが、三段の決勝といえば一昨年の都成三段が記憶に新しく、
すでにB級2組で活躍する菅井竜也六段にどのように戦うのか注目が集まります。

1局目は菅井の先手中飛車vs大橋の居飛車対抗。

先手は穴熊に組み上げますが後手の手厚い構想を前に、手作りに苦心します。
中盤最後に機を逃した先手を後手が鋭く仕留めました。

2局目は大橋の居飛車穴熊vs菅井の四間飛車穴熊。

後手番で千日手を含みに待機する菅井六段。
先手の細かい駒組みに隙ありと見て後手から打開していきますが、終盤はどちらが先に食いつくかという激戦に。最終盤の食いつきは穴熊戦ならでは攻防でした。

3局目は2局目と同じ相穴熊の対抗形に。

第2局と同様に相穴熊。機敏に動いた先手がリードを奪いますが、後手の勝負手順に形勢は切迫。
空間に放り込む終盤の追い込みは迫力がありますね。


菅井六段と言えば若手の中でも注目株の棋士ですが、対する奨励会員の大橋三段も積極的な指し回しで菅井六段を追いつめていて、その実力を示すところとなりました。
菅井六段はすでに他棋戦での活躍も目立ち、期待の集まる若手ですが、
大橋三段も四段に昇段してくるのが今から楽しみですね。


~雑記~
週末には稲葉アマの加古川決勝。
来週はいよいよ王座戦決着。
竜王戦も第2局、渡辺棋王の逆襲が見られるか。

アーイソガシイナー

最近の作業用BGM
- 君をのせて、城下町の向こうのあの蒼い月へ -
「君をのせて」が完璧すぎるw
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