【第65期王将戦第3局】
王将戦第3局。
戦型はおそらく誰もが待ち望んでいた相掛かりに進みます!
手順の組み合わせは珍しいものの、先手の▲3六銀戦法に対して後手が△8二飛型で迎え撃つ形へと進行します。
2016-02-06a
図の▲2五銀はもちろん棒銀の狙いですが、すぐに仕掛けるというよりは後手が隙を見せた瞬間に攻め込む手を見せながら間合いを詰める「模様を取る一手」。隙あらば棒銀の仕掛けが飛んでくるために後手としても慎重な駒組みが求められ、△5四銀と腰かける手に対して▲6八玉と陣形を整えたところで一日目は終了!?
素人目には「なんでこんな序盤に7時間以上かかってんだ?」と思われるかもしれませんが、これが達人の戦いというものですよ(`・ω・´)キリッ!!
難しすぎて分かんない

2016-02-06b
2日目からは中盤戦。羽生四冠の封じ手は△1四歩の端歩!?
これまた難解な・・・
ただ、どこかで△1三角と反撃する筋や△2四歩▲同銀△2三歩の銀挟みなどの狙いがあるため後手としては損にはならない手。一方の先手も△1四歩に対して1時間を超える長考で▲1六歩。端に争点が増えるだけで一気に攻め幅が増えるため、仕掛ける側から見てもこの端のやり取りは損には見えません。

後手としては隙を見せずに待機するのはそろそろ難しくなってきたところだろうと思いきや、羽生四冠の指し手は△9四歩とさらなる手渡し!\もうわけがわからないよ/
対して先手も▲9六歩と端を突き合って手渡しで返します
どういうことだってばよ・・・
もはやプロ棋士さえ置き去りにする応酬ですが、ここから局面のバランスは徐々に崩れ始めます。

2016-02-06c
上図の△4五銀は直前の▲9六歩に反応した手。
端の突き合いが入っていなければ▲6三角~▲9六角成と馬を作る筋があるため成立しなかった手です。後手は銀で中央を制圧し、今度は逆に後手が模様を取って先手陣に圧力をかけていきます。
先手は▲3八金と狙われている攻め駒をカバーしつつ、続く△2四歩に▲3六銀から銀をさばいて第二次の攻撃形を目指しますが、後手は手順に銀冠の好形に組んで隙を見せません。

2016-02-06d
先手は角を設置してから7七にあった銀を繰り出して攻めを目指しましたが、▲5五銀に対する△3五歩が機敏な一着で後手がリードを奪ってしまいました。同歩は桂頭に歩を打たれるので▲同角ですが、そこから△8六歩~△8六同飛~△7六飛と横歩をかすめた手が△5九角と△3六飛の転回を見せて軽快な攻め。△5九角を食らってはひとたまりもないので飛車先を受けますが、歩を垂らし、桂馬をぶつけて攻めの継続を図っていきます。

2016-02-06e
ただ、先手も後手の狙い筋を丁寧に受けて崩れません。後手の攻めも細いように思えたのですが、図の△7四桂が攻めを継続をさせる桂打ちで綺麗につながりました。つづく△8六歩も間合いを見切った強い踏み込み方で以下は後手玉にも嫌味をつけながら決して楽にはさせませんが、△8七歩成から手堅く先手玉を寄せて羽生四冠の勝利。先手も最後まで後手玉に迫りましたが、下図の局面で投了です。
2016-02-06f

1日目からかなりのスローペースで、2日目も午前中から難解で高度な進行でしたが、個人的には緊張した局面での端歩の突き合いと、それに機敏に反応して模様を取りに行った羽生四冠の大局観が印象的でした。
次は羽生四冠が先手番。次を落とすとカド番に追い込まれるために郷田王将が2勝に戻せるか、期待です。
戦型予想は角換わりが本命です。(次点で相掛かり)

【棋譜:第65期王将戦第3局】


相掛かりはときに▲4五銀や▲6五銀などといった模様を取りにいくような手が出てきます。こういった手が指せるようになれば相掛かりがもっとうまくなるんですが、なかなか理論的に導き出すには時間がかかる手なので、正直今回の対局を見てても全然時間足らないなぁと感じました。


【雑記】
ゲームのタイムアタックに関して「TAS」と「RTA」がよく分からなくなってる人がいますが、
TASはTool Assisted Speedrun(もしくはTool Assisted Superplay※こちら魅せプレイが多い)
RTAはReal Time Attackの略称です。
つまり、ツールなどを使って理論的最速攻略時間を追求するのがTASで、実際にコントローラーを持って最速の攻略を目指すのがRTAです。
ここでポイントになるのがTASはあくまで理論的な記録であるということ。実際にRTAで同じテクニックが使われることも多いですが、実機でプレイすること、ゲームによっては2、3時間を超える長時間ぶっ続けでプレイすることを考慮して、「10%の成功率で3分の短縮」よりも「80%の成功率で1分の短縮」ができるテクニックを採用するなど、かなり競技性を持ったプレイが重要になります。
他にも失敗したときのカバーや最適ルートよりも手堅いルートの構築を目指すなど、そういった人間の技術的な面に注目するととても楽しめます。

・・・

長々と話してどうした?と思われるかもしれませんが、なんかこの「理論的な最適解」と「実践的な最適解」という関係性が将棋というゲームに内包されてるなぁ、とふと思った次第です。
↑アッハイ

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