棋になる話を棋の向くままに

「おい、将棋しろよ」
某大学将棋部のアイツが色々書きます。
主に将棋の資料、タイトル戦の棋譜、自戦記などをうpしていきますが、ときどき将棋と関係ないことも記事にします。

更新頻度:月4~5回

2015年09月

更新遅れたなぁ(しみじみ)

将棋界の貴族、佐藤天彦八段が挑戦する第63期王座戦。
後手番を持った佐藤八段の戦型は第1局に引き続き横歩取り。
基本的に、相居飛車で後手一手損角換わりを除けば後手番の戦型は
矢倉+角換わり
矢倉+横歩取り
相掛かり+横歩取り
などの組み合わせが濃厚になる上、天彦八段は2手目に△3四歩と突いて
後手番での横歩取りを得意にしていることもあって、大方の予想通りの戦型ですね。

2015-09-27a
上図は序盤戦。後手は△1五歩と端を詰めているのが趣向で、機を見て△2四飛から
飛車交換になったときに△1六歩▲同歩△1八歩▲同香△1九飛▲2八金△2七歩
というような筋を狙っているため、先手としても慎重な対応が求められます。
また、上図から本譜の△6二玉は最近となっては違和感が少ない手ですが、
端を絡めて動くときにいずれ戦場になる2筋から遠ざけ、美濃に囲う順を見た構想です。

2015-09-27b
先手は銀を繰り出してから飛車を引き、落ち着いた流れになるかと思ったところで後手が仕掛けます。
本譜の△1六歩~△1七歩が機敏な動き。
先手はどう応じても△2四飛の筋を中心に動かれて戦いが起こることを避けられません。
先手の手段が困ったようですが、ここで▲2一角が羽生王座の指した手。
直接の意味では△2四飛の筋を防ぎながら先手を取ったものですが、
角を手放すだけに決断の一手です。後手は▲2一角に△2四歩と受け、
先手としては流れを治めることに成功しましたが、今度はこの角を活かすことができるかどうかに
焦点が絞られていきます。

2015-09-27c
△5二金~△2二金としても角を捕獲できますが、先手の飛車の射程に入ることや、
中央が薄いこともあって後手としても怖いところ。
本譜の△4二金~△5二金上は手数はかかりますが、△4一金~△3一金と
より安全に角を召し捕ってしまう狙いで、先手としては実現させるわけにはいきません。
しかし、上図の△2二角が先手の手を見切った対応で、
これで先手は△3一金の捕獲を防ぐことは困難になりました。
一度▲7五銀と飛車を追う手にも△8二飛で△3一金が間に合うと宣言しているのもポイント。

2015-09-27d
結果的に角桂と銀の交換となり先手は駒損。
先手は駒が前進しているものの、後手の陣形は低くコンパクトにまとまっており隙がありません。
先手は手を作っていかないと駒損だけが残ってしまうので▲3四歩△5一角▲3三銀!と
意地でも飛車を活用して攻め合いの形を目指しますが、下図の△2五歩が鋭い切り返し
2015-09-27e
同飛とする手に△4六桂▲同歩△1四角の間接王手飛車を用意している手ですが、
先手は他に手段も無いので▲2五飛△4六桂▲6八玉△3八桂成▲2一飛成として
勝負するよりありません。
2015-09-27f
後手は△4八成桂として寄せを狙いますが、羽生は即座に▲1一竜。
後手は黙っていると▲8五香(歩切れなので厳しい)や▲6五桂があって大変なので
ここでしっかり寄せきりたいところ。
本譜の△5九角~△6八金が恐らく最善最速の寄せで、同金に△8七飛成▲7八金打(他は詰み)
△3三角(下図)とした手が決め手となりました。
2015-09-27g
銀を取ったことで先手玉は詰めろですが、▲8七竜とすると△1一角とした手が
竜を取って再び詰めろで先手に手段がありません。
本譜は▲3三歩成と形を作ったところで後手が先手玉を詰まして投了となりました。

難しいように見える序盤から隙ありと見て動いた天彦八段の大局観。
羽生王座の勝負手にも冷静に対応した受けの強さ。
終盤で次々に繰り出される鋭い手と正確な寄せ。
天彦八段の強さが存分に発揮された快勝譜をなったことでしょう。

個人的には△1六歩からの仕掛けは定跡化されておかしくない手順だと思いました。



羽生王座は△1七歩と垂らされた時点ではすでに苦しいと見ていた模様。これで天彦は王座奪取にリーチ。
王座戦は羽生さんが最も力を発揮しているタイトルと言われるだけに、ここを取るかどうかはこれからの棋界のタイトル全体の流れを左右することになるやも知れません。
第4局は羽生王座が後手番。
横歩か角換わりというのが無難ですが、あえて力戦調の相居飛車と戦型予想してみます。

~雑記~
ニコ生にて村山じめいの謝罪会見が開かれました。
謝罪の内容を要約すると
①叡王戦で村山慈明が飯島七段を倒す。
②研究会で村山七段と飯島七段が同席する。
③村山七段か「叡王戦の調子はどうですか?」と飯島七段に聞く。
④「あ、そういえば僕に負けたんですね。」

ひねり飛車って奥が深い。



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角換わり多すぎぃ!!

第2局は角換わり。両者の戦型としては予想の範疇でしたが、
後手を持った羽生王座の対策は△6五歩の位取り。
2015-09-19a
渡辺棋王などが得意にしている指し方で、後手は最善形を崩さず待機する一方
先手は細かく整えて最善形の仕掛けを模索する展開になる作戦です。
ここから▲6八飛△6二飛▲4八飛△9二飛▲4五歩と進むのですが、
△9二飛で△8二飛とすると▲2八飛のときに後手は必ず陣形が僅かにほころぶ狙いです。
先手は4筋で歩を入手して、手順は違いましたが前例のある形に進行します。
2015-09-19b
記憶に新しい方がいるかと思いますが、前期王将戦で現れた形ですね。
前例の渡辺棋王の手は△5五銀と模様を張る手でしたが、
羽生王座の選択は△4二金引とさらに手待ち。
先手は▲5六歩から▲4六角や▲4六銀の好形を目指しますが、
▲5六歩と陣形が膨らんだところが隙と見て後手が動きます。
2015-09-19c
後手は8筋の突き捨てを入れた後に△7四歩から攻めを目指しますが
先手の▲4六角が急所の一着。後手は角を合わせて手順に桂を跳ねれるようですが
このラインを押さえておくことで後手の攻めを制約しています。
上図は▲4五歩と押さえたところで、▲4五桂が消えて損のようですが
8筋の歩得と4筋は位と見ることもできるので、黙っていると後手は押し負ける流れ。

黙っていられないとばかりに△6六歩~△9五歩と戦端を開いていきます。

2015-09-19d
後手の攻めがひと段落したところ。
上図で▲6六銀とするのも有力ですが、▲7八玉が天彦八段らしい受けの一手。
▲6六銀が潰す受けなら▲7八玉はさばく受けといった感じ。
後手は攻めが切れないように△6三飛から辛抱を重ねますが、
先手は後手に有効な手がないと見て自陣に手をいれていきます。

2015-09-19e
しかし、羽生王座を黙っていません。
先手が▲8五歩と伸ばした歩に狙いを定め、後手は総戦力を投資して先手陣の突破を図ります。
上図は受けきりも狙えそうですが、駒があちこちに利いていて意外とうるさい。
天彦八段の対応に注目が集まりますが、ここで▲3五歩と流れを切り替えて踏み込んだ手が勝着となりました。
2015-09-19f
後手は9筋の角銀を使わなければ攻められないのですが、
如何せん先手の攻めが早いため受けに回らざるを得ません。
持駒は桂と歩だけですが、上図の▲3四歩が厳しい攻めで△同銀に▲5五角で
△3三金右と受けさせてから▲4六桂と好所に桂を設置することに成功し、
以下は危なげなく先手が押し切りました。

中盤は後手がうまく手を作ってるようにも見えましたが、
天彦八段が正確な対応で受けきり、万全を期したところで一撃で決める。
攻防のバランスに優れた天彦八段の棋風が存分に発揮された一局ですね。

これで番勝負は1-1のタイに
リーチがかかる次の対局は今期王座戦の峠となりそうです。
戦型予想は横歩取りでどうでしょう。

【第63期王座戦第2局】

羽生といえば王座って感じです。
王座戦の決着は今後のタイトル戦の流れを作るものとなるか
期待が高まります。

ちなみに竜王戦は渡辺棋王が挑戦者に決まりました。
「竜王」のタイトルが最も似合う男、渡辺明。
どちらにせよ糸谷竜王にとっても厳しい戦いになることは間違いないでしょう。

~雑記~
ダイレクト向かい飛車面白い。

某漫画にチラッと登場した詰将棋です。
有名なやつですが、有段者ならひと目かも知れませんね。
2015-09-19g
解答は↓(反転)
▲2四香 △2三銀 ▲2二歩 △1一玉 ▲1二歩 △同銀
▲2一歩成△同銀  ▲1二歩 △同玉  ▲2三香成△1一玉
▲1二歩 △同銀  ▲2二と
まで
△2三銀の中合いに同香不成は△1二玉で不詰め。
銀以外の中合いは▲2二歩~▲1二歩の筋で詰むので無効。角の中合いも早詰み。
▲2三香成では▲2三とでも問題ない。
初めて解いたときには級位者だったので、2,3分かかりましたね。懐かしい

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棋譜とは将棋や囲碁における対局の流れを記録したものである。

棋譜で生じるメリットとしては
1.棋書や観戦記が読める。
2.大会で棋譜を取れる。(記録を残せる)


最近はスマホアプリが充実してることもあって、特にアマチュアでは年々棋譜を取る技術は需要が薄くなっておりますが、個人的には棋譜を正確に取れるというのは将棋指しとしてひとつのステータスだと思いますので、時間のある方は是非勉強して身につけてもらえればと思います。

棋譜の表記法

資料中の演習の解答は下の「続きを読む(パス不要)」から見れるようにしています。

あと、「行」や「入」という書き方も時折見られますが、公式的には使われない表記です。
ただ、分かりやすいように表記するのは悪いことではないので、駒の動きさえ正確に判断できるようならば、あまり気にせずに使用して構わないと思います。^^

日本将棋連盟のページにも棋譜の表記法について記載がありますので、
こちらも一度目を通しておくとより良いでしょう。
ていうか、こっちの方が分かりやすい・・・
棋譜の表記方法:日本将棋連盟
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3回戦が済んだので。

【第74期順位戦A級3回戦▲郷田真隆vs△佐藤康光】

相掛かりからやや古風な腰掛け銀に進み互いに厚みを築く中盤戦、
先手の駒組みに隙ありと見て仕掛けた佐藤九段の鋭い攻めが決まった一局。
途中の富士山のような陣形はなかなか見られない。

【第74期順位戦A級3回戦▲森内俊之vs△佐藤天彦】

最近、割と流行している力戦系の相居飛車からねじり合いの様相へ。
先手が機敏に攻めたところでの△4一玉!という非常手段に対し焦った先手を
粘り強い玉さばきと軽快な攻めで討ち取った一局。
やはり攻防のバランスの良さが輝いている。

【第74期順位戦A級3回戦▲屋敷伸之vs△広瀬章人】

屋敷得意の2枚銀急戦。
中盤の間合いの取り方が難しい局面での▲9六歩!
この端の空間が最後まで後手の寄せから紙一重で逃れる砦となり、
盤上の駒をフルに活用して寄せ合いを制した屋敷九段の会心譜!
屋敷、恐ろしい男!

【第74期順位戦A級3回戦▲深浦康市vs△久保利明】

久保九段のゴキゲン中飛車に対して超速3七銀から抑え込みにかかった先手。
苦心の順をつづける後手だったが▲4六金と陣形が上ずった瞬間を的確にとがめ、
「さばきのアーティスト」たる見事な駒捌きで一気に形勢に差をつけた振り飛車必見の一局。
80手目のさばけ具合は見ていて気持ちいい。

【第74期順位戦A級3回戦▲渡辺明vs△行方尚史】

角換わり相腰掛け銀の戦いで先手はシンプルな仕掛けを敢行。
単純だが受けづらく、守勢に回った後手を細くても確実な攻めで寄せきった
渡辺棋王らしい一局。
中盤の仕掛けは新しい定跡になるかも知れない。

ここまでの成績をまとめると
【3勝0敗】
渡辺明(2)、佐藤天彦(9)
【2勝1敗】
行方尚史(1)、森内俊之(7)、屋敷伸之(10)
【1勝2敗】
久保利明(3)、深浦康市(5)、佐藤康光(8)
【0勝3敗】
広瀬章人(4)、郷田真隆(6)
※()内は前期順位

前期のこともあって、まだまだこれからの順位戦ですが
昇級組の2名の調子が良さそうですね。
羽生世代も少しずつ下の世代に押されてきていますが、
A級は後半戦が本番といっても過言ではないですからね、
まだまだ分かりません。
とりあえず広瀬が阿久津の二の舞にならないことを祈りますw

~雑記~
スポーツの秋。読書の秋。食事の秋。将棋の秋
将棋に季節はあんま関係ないですけどw

~実戦必至~
私の実戦から。
下の局面は後手が△6三銀と飛車の利きで詰めろを受けたところですが、
ここでは後手を必至にかける一手があるので、当ててみましょう。
2015-09-08a
解答・解説↓(反転)
▲4二角
△同飛には▲同銀成で無効。後手は▲3一飛成、▲3二飛成を受けなければいけないが、
△2一金には▲3一飛成△同金▲3三桂の詰み筋があるので、後手に受けはない。
ちなみに実戦では△2一金に上述の詰み筋が見えず(指した途端に気付いて焦った)
▲5三角成としたが、これでも受けがなかったのは幸運だった。いやほんと。
ついでに▲3一角も厳しい詰めろだが、△5二金打とすればすぐの詰みはない。
進めるなら△5二金打に▲同銀成△同金▲4三桂くらいで受けがないので、
▲3一角が本筋という人も合格だと思いますけどね( ´ ∇ ` )


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稲葉聡アマをご存知でしょうか?
プロ棋士である稲葉陽七段の実兄でアマチュアの強豪ですが、
なんと加古川青流戦で並み居る奨励会員と若手プロを破り
決勝三番勝負へと駒を進めました。

...ちょっと強すぎですねw

指し回しもプロ顔負けのもので、朝日杯でも同様に活躍していました。
(こちらは一次予選の藤井九段戦にて敗退)
加古川青流戦決勝戦の相手は森下九段が溺愛する増田康宏四段!
若手登竜門の棋戦らしい華々しい将棋に期待です!

【第5期加古川青流戦1回戦▲石川優太三段vs△稲葉聡アマ】


【第5期加古川青流戦2回戦▲稲葉聡アマvs△今泉健司四段】


【第5期加古川青流戦3回戦▲稲葉聡アマvs△宮本広志四段】


【第5期加古川青流戦4回戦▲稲葉聡アマvs△渡辺大夢四段】


【第5期加古川青流戦準決勝▲甲斐日向三段vs△稲葉聡アマ】


~雑記~
部員の棋譜もあげてみたいんですが、如何せん我が部は棋譜を取っても
それを保管する習慣がなく、恐らく今までに棋譜を取った人もどこにやったか
覚えていないのがほとんどでしょうw
かくいう私もデータどこにやったか覚えてないんですよw

今後は大会の棋譜くらいはキッチリ記録・保管していきたいですね。



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