棋になる話を棋の向くままに

「おい、将棋しろよ」
某大学将棋部のアイツが色々書きます。
主に将棋の資料、タイトル戦の棋譜、自戦記などをうpしていきますが、ときどき将棋と関係ないことも記事にします。

更新頻度:月4~5回

カテゴリ: 将棋資料

【第65期王将戦第4局】
羽生名人が挑む王将戦。2勝1敗と後手番で一歩リードして迎えた第4局は角換わり。
2016-02-19a
考慮時間を適度に消費しつつ、端を突きあう角換わりの基本形へと進みます。
両者は先月に端を保留する形の角換わりを指していることもあって、水面下では細かい駆け引きがなされていたのでしょうが、上図まで進んでしまえば角換わりを指す人からすれば見慣れたものですね。

図で△4二金右が直近では一番多く採用されて最有力と言われている(らしい)手ですが、郷田王将の選択は△7三桂。隙を与えずに手待ちをするなら△4二金右や△4三金右などで、△7三桂は桂頭のキズを抱える手のため後手からも積極的に攻めてくる展開が予想されるところです。

2016-02-19b
対する羽生名人は長考で▲4五歩と仕掛けます。
ここで先手がゆっくりしていると、後手から△6五歩と仕掛ける展開で受け身になってしまうため、攻めるなら頃合い。△4五同歩の一手に対して、先手は端を絡めたり▲7五歩の突き捨てをいれたりと戦線を拡大しながら複雑に攻めていくかと思いきや、単に▲4五同銀。
▲4五銀の局面は既に前例がなく、先手は入手した歩を利かす筋が少ないだけに単調な攻め筋に見えますが、先手の攻め駒もすべてさばけているので、後手としても慎重な対応が求められるところです。

2016-02-19c
先手は囲いを正面から崩しにかかりますが、後手の△4三銀打~△4一玉が力強い対応。さらに、先手の攻めの面倒をみて余しにかかり上図。後手の陣形は跡形もありませんが、駒割は▲金△角桂と後手が大きくリードしています。先手は玉型がしっかりしているうちに駒の補充を図りながら後手玉に食らいつきたいのですが、如何せん攻め駒不足で、後手の玉が少し安定したところで反撃が始まります。

2016-02-19d
手筋の連続で迫る後手に先手は攻め合いへとシフトするタイミングがありません。
手順に金銀交換も果たし、急所に駒を利かされたところで先手は▲4三歩と開き直ります。先手の攻めは明らかに一歩遅く、後手が決めてしまえば勝負は決まる局面。飛車筋が逸れ、先手に手駒を持たれると▲3一銀などと迫られて怪しいことになってしまうのですが、そこは流石の郷田王将!△7六桂▲同金△6七金▲7七金引の形から△8六飛~△8七歩~△8五桂が読みきりの寄せで、先手に粘る手段を与えずに一刀両断しました。
2016-02-19e
▲4五銀の攻めは意外にも前例のない攻めのため結論を出すのは難しいでしょうが、やはり駒損して攻めることになるので、相当の成算がたたないと踏み込めない攻めだと思います。最も、この攻め筋が成立してしまえば後手の△7三桂は潰れることになりかねないので、角換わりの後手番を持つ側からすれば救われた感じはしますが。
また、終盤の郷田王将の△8六飛からの寄せは、見えていても指せる人は少ないのではないかと思われるくらい鋭い踏み込みで感嘆させられました。ふつくしい・・・///

これで番勝負は再び振り出しに。
フルセットの七番勝負が見られるかもしれねぇから、オラわくわくすっぞ♪

【棋譜:第65期王将戦第4局】


【棋譜:第9回朝日杯将棋オープン戦本戦▲郷田真隆vs△羽生善治】

あと参考程度に、朝日杯での羽生名人vs郷田王将の棋譜です。
先手、後手がそれぞれ△9四歩、▲1六歩を省略するという意味不明な形。
正直、級位者の方には「先手番では端を突く」「後手番では端を受ける」ことをお勧めしたいですけどね。損にはなりにくいので。


【創作詰将棋】
欲望のままに作った問題。簡単ですが意外と詰み筋は狭いです。
2016-02-19f
↓解けたらクリック!!


【雑記】
将棋で、誰のファンかと言われれば郷田王将のファンです。ただ、森内先生の矢倉に憧れ、野月先生の激しい攻めに興奮し、羽生名人の魔術めいた指し手に頭を悩まされながら、里見香奈の活躍を応援しつつ、藤井てんてーに癒される。そんな将棋ファンです。

あ、アルバム買わなきゃ。続きを読む

【第41期棋王戦第1局】
渡辺明棋王に佐藤天彦が挑む第41期棋王戦。
今期は棋聖戦では挑決に勝ち上がり、羽生王座との五番勝負、そして順位戦でも首位に立つなど、他の棋戦と合わせてその充実ぶりが伺えるだけに渡辺棋王との対局にも期待が高まります。
第1局は佐藤天彦八段が先手の正調角換わりに進み、大方の予想通りの戦型となりました。

2016-02-12a
小考を挟みつつスラスラと上の局面まで進みます。
ここから後手が▲4五歩~▲4五桂に備えて△4三金直とあがり、先手が▲4八金として▲6八飛の筋が消えたところで△6五歩と突きました。この進行は昨年の第56期王位戦第5局と同じ進行ですね。
【ブログ内記事:第56期王位戦第5局】

2016-02-12b
△6五歩に対して▲6四角が部分的な定跡になっているのですが、図の△7三角が渡辺棋王の新趣向。
前例はすべて△9二飛と指されていたため、ここからは未知の局面での戦いとなります。
6筋をどうケアするのか気になりますが、先手は手順に6筋の歩を伸ばし、後手は我関せずと桂馬の活用を図っていき、一方の先手も歩を成り捨てて銀を後退させたところで▲4五歩から攻撃を開始します。

2016-02-12c
先手は角も設置して正面からの攻略を目指しますが、やはり気になるのは2八の飛と4八の金。後手の△5四金も形にとらわれない力強い一手で、自陣が薄くなるリスクと引き換えに攻撃陣の手厚さを重視した一手です。
あと一手▲2九飛あるいは▲5八金などが入っていれば先手も不満のない攻撃形なのですが、本譜のように進行してみると先手は無理な動きを強いられたような印象を受けます。

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先手も3筋の突き捨てから桂を跳ね、後手も7筋を取り込み8筋を突き捨ててと力の蓄える指し手が続き上の局面。
互いに玉は薄くなっていて攻めるか受けるか非常に難しい局面ですが、ここから▲2四歩~▲2五歩~▲2四歩の継ぎ歩と垂れ歩の手筋の攻めを敢行して攻め合いを目指します。しかし、後手は飛車を走った後△8四飛の銀にひもをつけて△4五銀を催促したのが間合いを見切った対応。先手も▲2五飛と走り、銀を入手してからの▲2三銀が強烈なため後手は緩む暇なく攻めなければいけませんが、△7七歩~△7六歩~△8六歩がお手本のような手筋の攻めで、最後に放った△4三角が間接的に7六の銀をにらんだ厳しい一手で決め手となりました。
以下はまったく付け入る隙を与えずに先手玉を寄せきり終局。
第1局は後手番の渡辺棋王の先取となりました。
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△7三角は非常に理解するには難しい手ですが、桂馬の活用を急いだ手といったところでしょうか。
ただ、6筋の歩が伸ばされること、先手も4筋が攻めてくることを考えても中途半端な攻撃力では先手陣に手が付く間もなく終わる危険もあるので、攻めを繋げる渡辺棋王ならではの構想だったと思います。

次は渡辺棋王が先手番。戦型予想は横歩取りが本命ですね。

【棋譜:第41期棋王戦第1局】

羽生&郷田「いよいよ新世代の到来だな!」


【実戦詰将棋】
2016-02-12f
私の実戦から。詰ましなさい(威圧)
最初の手順が見えれば結構簡単かと思いますがどうでしょう。


【将棋世界3月号】
先日買いました。今回の付録は1手3手必至。私は40分足らず位で一通り解き終わりましたが、2,3問間違えたので有段者の方には丁度いいくらいですかね?
あと、先月号から始まっているプロの自戦記(先月は佐藤康光九段、今月は瀬川晶司五段)が面白いですね。
プロの思考を知れるというのはもちろんですが、単純に読み物としても面白いです。
是非、棋譜を並べながら一読することをお勧めします。

【参考棋譜:第74期順位戦B級2組▲藤井猛vs△飯島栄治】

相振り飛車講座の中で書かれていた「後手追随型」の参考棋譜。
女流戦では相三間を結構見かけますが、男性棋戦ではほとんど見られないのが残念です。


【第1期電王戦】
山崎八段とponanzaによる二番勝負の日程と場所が決まりましたね。
ただ、比叡山延暦寺て・・・w
機材の持ち込みとか関係者の移動とか、大変そうですね(- -;)
ちなみに日程は以下
4/9,10: 関山 中尊寺
5/21,22: 比叡山 延暦寺
楽しみです。^^


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【将棋ウォーズ必勝定跡(vs PonaQ10 4級)】

日本将棋連盟公認の将棋対局アプリで、一日3局まで無料で対人戦が可能。また、対局時間も10秒将棋、3分切れ負け、10分切れ負けと、空き時間に手軽に対局できるのが魅力で、20万人近いユーザーが利用しています。(もっといるのかな?)
もちろん、対人で対局するのがメインの楽しみ方ですが、CPUとの練習対局から始める初心者の方も多いのではないのでしょうか?本記事で紹介するのは将棋ウォーズのCPU「難しい」レベルを相手にほぼ確実に優勢へ持ち込む定跡になります。
ただし、対人では基本的に成立しない筋ですので、あくまで対CPU用との作戦ということをお忘れなきよう。

Step1. 先手を取ろう
これは簡単ですね。後手番になったときには投了して、先手番になるまで繰り返しましょう。
※後手番でも勝てる順はありますが、相手の1,3手目によって分岐が多くなるので割愛。

Step2. 飛車先を突く
私は振り飛車を指したい!という人もいるかも知れませんが、分岐を狭くする意味でも初手は必ず▲2六歩と突きます。

さてこれで先手の優勢はほぼ確約されました。
ここで後手が△8四歩あるいは△3四歩と指した進行を順に見ていきましょう。
(1)△8四歩以下
▲2五歩  △8五歩  ▲2四歩(図1)
2016-02-07j
本来は▲2四歩とせずに▲7八金とするのが相掛かりの定跡(資料参考)ですが、「難しい」レベルのCPUには通用します。ここから後手は△8六歩と△2四同歩とする進行があるので、順に見ていきます。

(1a) △8六歩の進行
図1から
      △8六歩  ▲2三歩成 △8七歩成 ▲2二と  △8八と  
▲3一と  △5二金左 ▲8八銀  △2七歩  ▲5八飛  △2八歩成 
▲同飛   △2七角  ▲8七歩  △4九角成 ▲同玉(図1-1)
2016-02-07b
後手は飛車が縦に動けない(△8八飛成がある)のを見越して2筋に駒を連打しますが、角を打ったタイミングで▲8七歩とすれば暴発します。また、△2七角では△2五角という変化に進むこともありますが、以下▲8七歩△4七角成▲4八金△7四馬▲2一飛成で十分です。ただ、こちらは△2九馬に気を付けないといけないので、やや神経を使う進行でしょうか。

(1b) △2四同歩の進行
本来なら△2四同歩で先手の分が悪いのですが、「難しい」レベルのCPUには通用します。(大事なことなので(ry)
図1から
      △2四同歩   ▲同飛   △3二金  ▲2三歩  △同金   
▲同飛成  △4一玉  ▲7八金  △6二銀  ▲2八竜(図1-2)
2016-02-07d
後手の指し手はいろいろありますが、高い可能性で次は△3二玉とするので▲2三金~▲2二金とすれば大成功となります。△6二銀に代えて△6四歩などと指すこともありますが、そのときは▲4八銀などと待ち、△6二銀や△5二金と飛車の横利きが消えた瞬間に▲2三金としましょう。


(2)△3四歩
▲4八銀  △4二玉  ▲5六歩  △3二玉  ▲5七銀  △4二銀
▲4六銀(図2)
2016-02-07f
ここで△3三角と△4四歩で進行が変わるので見ていきます。

(2a) △3三角の進行
図2から
      △3三角  ▲2五歩  △5二金右 ▲4五銀  △3五歩
▲3四銀  △2二角  ▲2四歩  △同歩   ▲同飛   △3三銀
▲同銀成  △同玉   ▲2八飛  △3二玉  ▲2四歩(図2-1)
2016-02-07g
大体こう進みます。
▲3三銀成に対して△同角とするときも一旦飛車を引いてから▲3四銀や▲2二歩を狙って十分です。

(2b) △4四歩の進行
図2から
      △4四歩  ▲2五歩  △3三角  ▲3六歩  △5二金右
▲3五歩  △1五角  ▲6八玉  △3五歩   ▲同銀   △3三角  
▲2四歩(図2-2) 
2016-02-07h
進行は一例ですが、3筋を伸ばしてやはり銀の攻めが炸裂しやすいです。
ちなみに、2手目△3四歩に対しても▲2五歩からストレートに棒銀を狙うのは有力です。
進行例を示すと
△3四歩以下
▲2五歩  △3三角  ▲3八銀  △3二金  ▲2七銀  △6二銀
▲2六銀  △5二玉  ▲1六歩  △4二銀  ▲1五銀  △3五歩
▲2四歩  △同歩   ▲同銀   △5五角  ▲2三銀不成△3三金
▲2二歩  △2三金  ▲同飛成  △3三桂  ▲2一歩成(図3)
2016-02-07i
ここから後手は△4五桂という反撃筋を狙いますが、丁寧に▲4八金と受けておけば問題ありません。
あと、稀に後手は△2二銀と棒銀に備えることがあるので、そのときは▲3六歩から角頭を狙う方針にシフトするのがおススメです。

ざっくりですが、これでメインの変化の解説は終了です。
ただ、コンピュータもランダム性を持っているため、例えば2手目△3四歩に対して▲4八銀とすると△3三角▲5六歩△5二玉と変化したりします。あまりに変な手順は少ないですが、こういったたまに出てくる異なる変化を網羅するのは難しいので、今回は7,8割の可能性で進みうる進行に限ってまとめてみました。

ユーザー毎に設定が異なっているという事がなければ、恐らく誰でも似たような進行になるはずなので、是非お試しあれ♪
勝っても何も得られませんが( ̄∇ ̄)

↓まとめた棋譜

棋譜を研究すというよりはデバックに近い感覚でした。


【おまけ】
プロの対局をひとつご紹介。
今期勝率1位の男、斎藤慎太郎君の角換わり。
【第74期順位戦C級1組▲斎藤慎太郎vs△塚田泰明】

最新型の駒組みから中盤一気に踏み込みリードを奪います。後手の塚田九段も△6九銀から先手玉に迫りますが、端の位を活かして見事に逃げ切った一局です。
イケメンのくせに将棋強いとか卑怯
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【第65期王将戦第3局】
王将戦第3局。
戦型はおそらく誰もが待ち望んでいた相掛かりに進みます!
手順の組み合わせは珍しいものの、先手の▲3六銀戦法に対して後手が△8二飛型で迎え撃つ形へと進行します。
2016-02-06a
図の▲2五銀はもちろん棒銀の狙いですが、すぐに仕掛けるというよりは後手が隙を見せた瞬間に攻め込む手を見せながら間合いを詰める「模様を取る一手」。隙あらば棒銀の仕掛けが飛んでくるために後手としても慎重な駒組みが求められ、△5四銀と腰かける手に対して▲6八玉と陣形を整えたところで一日目は終了!?
素人目には「なんでこんな序盤に7時間以上かかってんだ?」と思われるかもしれませんが、これが達人の戦いというものですよ(`・ω・´)キリッ!!
難しすぎて分かんない

2016-02-06b
2日目からは中盤戦。羽生四冠の封じ手は△1四歩の端歩!?
これまた難解な・・・
ただ、どこかで△1三角と反撃する筋や△2四歩▲同銀△2三歩の銀挟みなどの狙いがあるため後手としては損にはならない手。一方の先手も△1四歩に対して1時間を超える長考で▲1六歩。端に争点が増えるだけで一気に攻め幅が増えるため、仕掛ける側から見てもこの端のやり取りは損には見えません。

後手としては隙を見せずに待機するのはそろそろ難しくなってきたところだろうと思いきや、羽生四冠の指し手は△9四歩とさらなる手渡し!\もうわけがわからないよ/
対して先手も▲9六歩と端を突き合って手渡しで返します
どういうことだってばよ・・・
もはやプロ棋士さえ置き去りにする応酬ですが、ここから局面のバランスは徐々に崩れ始めます。

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上図の△4五銀は直前の▲9六歩に反応した手。
端の突き合いが入っていなければ▲6三角~▲9六角成と馬を作る筋があるため成立しなかった手です。後手は銀で中央を制圧し、今度は逆に後手が模様を取って先手陣に圧力をかけていきます。
先手は▲3八金と狙われている攻め駒をカバーしつつ、続く△2四歩に▲3六銀から銀をさばいて第二次の攻撃形を目指しますが、後手は手順に銀冠の好形に組んで隙を見せません。

2016-02-06d
先手は角を設置してから7七にあった銀を繰り出して攻めを目指しましたが、▲5五銀に対する△3五歩が機敏な一着で後手がリードを奪ってしまいました。同歩は桂頭に歩を打たれるので▲同角ですが、そこから△8六歩~△8六同飛~△7六飛と横歩をかすめた手が△5九角と△3六飛の転回を見せて軽快な攻め。△5九角を食らってはひとたまりもないので飛車先を受けますが、歩を垂らし、桂馬をぶつけて攻めの継続を図っていきます。

2016-02-06e
ただ、先手も後手の狙い筋を丁寧に受けて崩れません。後手の攻めも細いように思えたのですが、図の△7四桂が攻めを継続をさせる桂打ちで綺麗につながりました。つづく△8六歩も間合いを見切った強い踏み込み方で以下は後手玉にも嫌味をつけながら決して楽にはさせませんが、△8七歩成から手堅く先手玉を寄せて羽生四冠の勝利。先手も最後まで後手玉に迫りましたが、下図の局面で投了です。
2016-02-06f

1日目からかなりのスローペースで、2日目も午前中から難解で高度な進行でしたが、個人的には緊張した局面での端歩の突き合いと、それに機敏に反応して模様を取りに行った羽生四冠の大局観が印象的でした。
次は羽生四冠が先手番。次を落とすとカド番に追い込まれるために郷田王将が2勝に戻せるか、期待です。
戦型予想は角換わりが本命です。(次点で相掛かり)

【棋譜:第65期王将戦第3局】


相掛かりはときに▲4五銀や▲6五銀などといった模様を取りにいくような手が出てきます。こういった手が指せるようになれば相掛かりがもっとうまくなるんですが、なかなか理論的に導き出すには時間がかかる手なので、正直今回の対局を見てても全然時間足らないなぁと感じました。


【雑記】
ゲームのタイムアタックに関して「TAS」と「RTA」がよく分からなくなってる人がいますが、
TASはTool Assisted Speedrun(もしくはTool Assisted Superplay※こちら魅せプレイが多い)
RTAはReal Time Attackの略称です。
つまり、ツールなどを使って理論的最速攻略時間を追求するのがTASで、実際にコントローラーを持って最速の攻略を目指すのがRTAです。
ここでポイントになるのがTASはあくまで理論的な記録であるということ。実際にRTAで同じテクニックが使われることも多いですが、実機でプレイすること、ゲームによっては2、3時間を超える長時間ぶっ続けでプレイすることを考慮して、「10%の成功率で3分の短縮」よりも「80%の成功率で1分の短縮」ができるテクニックを採用するなど、かなり競技性を持ったプレイが重要になります。
他にも失敗したときのカバーや最適ルートよりも手堅いルートの構築を目指すなど、そういった人間の技術的な面に注目するととても楽しめます。

・・・

長々と話してどうした?と思われるかもしれませんが、なんかこの「理論的な最適解」と「実践的な最適解」という関係性が将棋というゲームに内包されてるなぁ、とふと思った次第です。
↑アッハイ続きを読む

【第65期王将戦第2局】
1月24日、25日に渡って行われた王将戦第2局。
どちらかというと後手番の郷田王将の作戦に注目が集まりますが、最新の9筋保留型の角換わり腰掛け銀へと進みます。
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先手は▲3七桂とすると桂頭のキズが気になり、▲2五歩△3三銀とするのも桂の活用が狭く決め過ぎの感があります。ここから△6三金▲6七金右△6二金と難しい手順ですが、意味としては攻めの形を見せられた先手が備えたところで、先手陣に隙が多くなったため自陣の隙をなくして陣形整備に移るといった要領。後手番は千日手上等ですので、先手は隙のない攻め形を築くのが難しいです。

2016-01-28b
本譜▲1八香はとにかく形を決めずに待機した意味合いが強いですが、やはり1九の隙や後に△2七角と香を狙われる筋が生じるため一長一短。ただ、後手も△3三銀とするのは桂の当たりが強くなるため、△2二玉と入城しますが、玉の当たりが強くなったところで▲4五歩と仕掛けます。
先に桂を跳ねると桂頭を狙われるとはいえ、▲4五歩に対して△4六角と角換わりでよく見られる反撃筋で対応したところで1日目は終了。(下図)
2016-01-28c
本譜の▲3七角は本筋ですが、△4五歩に対して▲4六角△同歩▲3七桂とすると、▲4五歩に対して単に△同歩▲3七桂と進む進行より後手が△4六歩の一手を多くさせている勘定になります。先手としても後手だけ得するのは面白くないので、△4五歩に▲4八飛と4筋へ戦力を足しますが、ここで後手からの反撃が気になるところ。
本譜は郷田王将が△8六歩から反撃を開始します。

2016-01-28d
ただ、本譜の△6五歩に対して▲4六角~▲6五歩と自分から角交換して手を戻すのが好判断。先手の▲6六角が好所の角打ちで玉を睨んで厳しいとみたものです。かといって、△6六歩と手筋で角打ちを防ごうと思っても▲7七角とこのラインに角を打ちこむ手があって大変です。
桂馬の活用が遅れるだけに盲点でしたが、後手が陣形を乱して馬を作ってる間に、▲6六角と▲3五歩で玉のコビンに厳しく迫ります。

2016-01-28e
後手は陣形を後退して辛抱。馬で飛車を追いかけて、どこかで△4一飛の活用を狙いますが、上図の▲4四飛が柔軟な一手で後手がしびれました。△4三歩には▲4六飛と落ち着いて飛車を戻し、さらに馬で飛車を追いますが、▲6八飛と逃がしてしまった形は先手の9筋攻めが残っており、後手は飛車の活用が難しくなってしまっていて形勢に差がつきました。
2016-01-28f
後手は動かないと完封されてしまうので、6筋から仕掛けていきますが、▲6三歩の痛打がはいり先手が優勢に。本譜は△同金に▲6五銀~▲7二銀がはいってハッキリ勝勢となり最短で押し切りました。
上図では△7二金▲6五銀△同桂▲7三銀△同金▲同角成りの進行なら△9六桂の筋が残って先手も大変とされましたが、やはり先手が正確に指せば残していることは変わらず、形勢としては先手が勝っていたようですね。

【棋譜:第65期王将戦第2局】

後手は△8六歩からではなく、△6五歩▲同歩△8六歩▲同銀△6六歩▲6八金引なら郷田王将の作戦通りだったようで、本譜の手抜きが利いたのが大きな誤算だったようです。もちろん、△8六歩に▲同歩の進行も考えられるため一概に良いとは言えませんが、後手が待機したために生じた隙を的確に捉えた羽生名人の大局観、そして▲4四飛という羽生さんらしい柔軟な一手が輝いていた一局でした。
これで七番勝負は1-1のタイに戻り仕切り直しの様相。
まだまだ熱い勝負が続きそうです。

【5筋位取り】
2016-01-28h
まだやってんのかよ!
今の課題は上の局面。後手は△7一金を保留したり、△6四歩をとにかく急いだり色々手段はあるものの、上の角覗きに味のいい受け方が難しそうというのが現段階での見解。
△5二金が普通ですが、▲5七銀~▲6六銀として▲6五銀~▲5四歩を狙うか▲6八金右~▲8八玉と固めるか難しい。いろいろ考えるのはいいんですが、ここひと月以上24に触れていないので、そろそろ復帰させないとヤバいです。

【雑記】
今年の寒波はすごいですね。
私のいる地域でも雪が降り、近所の小学生がキャアキャア騒いでいるなか自転車でこけそうになっているおじさんです。

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